もう十年以上前のことだが、ある日、会社の帰りに私鉄の電車(T急線)に
乗っていた。
普段はJRなのだが、ドラムの練習でスタジオに寄る途中だったのである。
発車を待つ間、座席に座っていた私の前に、外国人男性がつかつかと
寄ってきた。
どこの国の人間か分からなかったが、欧米人などではない感じで、肌の色や
顔つきから、中東の人(?)っぽい雰囲気があった。
彼は、乱暴な感じで私の隣にドスンと腰を下ろした。
若干、アルコールの匂いが漂ってくる。
窮屈に感じたので、私は、少し腰を浮かせて体の位置をずらすようにした。
それが、彼には何か差別的な行為に感じられたらしく、いきなりケンカ腰になり、
英語で何やらまくしたてた挙句、
「あんたみたいな醜い(=ugly)女は、こっちがお断りだ」
みたいなことを(英語で)言ってきた。
あまりの攻撃的な態度に、((何だこいつ?)) とあっけにとられていた私だが、
意を決して
『Oh,am I ugly!? THANK YOU!!』
と言い放って席を立った。
そして、まだ発車していなかった電車を降りて、次の電車に乗ったのであった。
思うに、彼は(外国人だからということで)日本で差別的な対応を受けたりして
相当イヤな思いをしたのだろうか。
それで、私が(悪意はなかったにせよ)少しよけるような動きをしたことが、
気に障ったのかも知れない。
数日後、会社に定期的に来てレッスンをしてくれていた英会話講師(米国人)に、
その話をした。
先生は、そういうときは ″room″ という言葉を使うと良い、と教えてくれた。
room には、部屋という意味のほかに、空間とか空きスペースといった意味がある。
私が避けたのだと勘違いした相手の男には、単に狭かったからということで、
「I just wanted to make us more room.」
などという感じ(?)で事情を説明すればよかったのかも知れない。
(しかし、突然のことでそれは言えんよなぁ~、なかなか。)
街中や電車の中で外国人と一緒になる機会は多い。
この経験をどこかで役立てたいものだが、
見知らぬ外国人からケンカを売られるという経験は、後にも先にもないのであった。
* * *
季節は少し前、社宅敷地のイチョウ。