ある木曜の夜、「今日も疲れたし、ビール飲みながら、TBSの『モニタリング』でも
見てダラダラするかな~♪」と、テレビを付けた。
ちなみに『モニタリング』とは、何も知らない一般人などに、ドッキリ的な
シチュエーションの仕掛けをしてその反応を楽しむという番組である。
エゲツないなぁ~と思う時もあるけれど、ビールを飲みながらユル~い気分に
浸るには結構いい。
が、残念なことに、その日は『モニタリング』を放送していなかった。
ほかのチャンネルに変えてみても、今一つ面白そうな番組がない。
こういうときは、仕方がないので最終手段(?)として「放送大学」に合わせるのが、
私の常である。
「放送大学」・・・それは、毒にも薬にもならず(というか、内容的に役立つと
いう意味で、薬になる場合はある)、平和な気分で眺めていられる番組なのである。
テレビを付けたらいきなり不快な有名人(!)とかが画面に出てきて焦った場合に、
緊急避難的に放送大学に切り替える、という使い方も・・・。
そういうわけで放送大学にチャンネルを合わせると、「アルミニウム合金の析出
組織」の電子顕微鏡写真が、いきなり画面に登場。
私が大学で学んでいた金属工学、それも、所属していた研究室のテーマと密接な
世界である。
「う、うそ~。」と、一瞬、目が釘付けになる。
アルミニウム合金は工業的には非常にメジャーな材料で、ビールの缶から
航空機の材料まで様々に使われているが、その合金結晶のミクロな組織を
電子顕微鏡で見るとこうです、という内容がテレビに登場することは、ほとんど
ない。
それだけ専門性が高いのだが、逆に、すごくマイナー(かつオタク?)な世界
なのである。
「放送大学」と言えども、これが出てくるとは、かなりの驚きではある。
画面に映し出された写真や図を説明する「放送大学」講師の話を聞きながら
私は、大学の研究室で指導を受けていたS先生(=当時の助教授)
のことを思い出していた。
S先生はまさに、こういう話を授業で説明したり、研究室の学生に語ったり
していた。
テレビの講師の声を、当時のS先生の声に重ね合わせながら懐かしさに浸る。
そのうち、指し棒を持った講師の指が現れ、画面内の写真の一部分を差した。
S先生も、こういう感じで「指毛」が濃かったよなぁ。
あのころ研究室で、隣に座って電子顕微鏡の操作を教えてくれたりしていた
S先生は、たしかに「指毛」が濃かった。
(しかし、研究に集中しないで何を見ていたのか当時の私・・・。)
ついに、テレビの画面がスタジオに切り替わり、講師の顔が映った。
そこにいたのは、まぎれもなく、S先生であった!
番組は、放送大学の「材料工学と社会」というプログラム。
S先生は、その講師を務めていたのである。
私は、ビールの炭酸をプハ~と吐き出しながら、
「先生だったんすか~ もう!!!」と、崩れ落ちながら思わず叫んだ。
最後に事実を知らされて驚きながらもズッこける、『TBSモニタリング』の
ターゲットになった気分・・・ということにしておこう。
その後も講義は続き、私は番組の最後まで真面目に視聴した。
(ビールを飲みながら、だけど。)
この講座は全14回のシリーズで、その日に放送されたのは最後の2回だったようだ。
う~ん残念・・・。
* * *
8月に千葉の館山へ行ったとき、海辺を散歩中にウミネコを発見。